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インターネット通信が一般家庭で当たり前のように使われる状況になり、通信回線の観点で見ると、電話という通信手段も多様化してきた。全国を網羅する電話回線を所有するNTTは、今や従前の電話網や交換機が『お荷物』となりつつある。 IP(インターネットプロトコル)電話は、インターネットの回線を使って電話をかける仕組みだ。電話イコールNTTと思いこんでいると、便利や廉価といった新しい環境に取り残される。されどもIP電話を提供するサービス会社やそのサービスの種類は、少々複雑で充分に理解するには情報が足りないか、もしくは難しいのが現状。 気になる「お持ち帰りモデムキャンペーン」で、街に旋風を巻き起こしている『Yahoo!BB』を軸に、IP電話の周辺事情を調べてみた。他業界の?「クエスチョン」から我々が学ぶことはあるか
●街角で席巻する『Yahoo!BB』
  世界一のインターネット検索サイト『Yahoo!』の日本での運営会社であるソフトバンクが、ADSLブロードバンドサービスを始めたのは2001年9月。このインフラを使い電話事業に着手したのが昨年四月である。いわゆるIP(インターネットプロトコル)電話だ。その名は『ヤフーBBフォン』。NTT回線だと、距離で時間単価が高くなるが、BBフォンなら市内市外、ついでに米国へも一律、3分7.5五円(ちなみにNTT通話料金は市内3分8円、20kmまで3分20円、100km以上は3分80円!)。


 街頭キャンペーンの王様といえば、かつてはタバコだった。しかし今や犬も歩けば『Yahoo!BB』に当たる程の勢いで、どこの街角にもキャンペーンの幟を見かける。Yahoo!BBロゴ持ってけ持ってけと、押しつけるようにアプローチしてくる。(男性諸氏には残念ながら)別段麗しいキャンギャルがいるわけではない。学生アルバイト?な印象だ。
 商品説明はいたって簡素で、ともかく『家庭に一台』的な販促をしている。買い物かごを手にした、いかにもオバチャンにさえ「BBフォンいかがですか?」なんて、端で見ている方が心配になってくる。


 キャンペーンについては、巷間囁かれる『モデム一台2万円』というコストに関して、ソフトバンクのBBフォン事業部は事実と認めている。販売は代理店を使っており、契約のインセンティブ料がおよそ2万円ということだ。モデムは無料ではない。いずれ無料お試し期間が終了すれば、月額使用料が発生する。
●窮地に立つNTT
  昭和27年に日本電信電話公社が発足、昭和42年に全国都道府県庁所在地相互間のダイヤル通話がスタートするまでに、国策として全国津々浦々に電話線は張り巡らされた。電話が使いたい事業所もしくは家庭は、電話債券を購入して電話を設置するという方法をとってきた為、電話加入権は売買されてきた。
 ところが、90年代にパソコン通信に対応したISDN回線サービス(総合デジタル通信網)が開始されると、ISDN回線では電話加入権は認められなくなった。ISDN回線に変更したため債権が消滅したという実例もある。次いで出てきた携帯電話が、単身者世帯の架線電話需要を著しく低下させた。更に追い打ちをかけるように、95年以降に飛躍的に普及し始めたインターネット環境下では、高速接続が求められ、ADSL(非対称デジタル加入者線)へと移っていくと、ソフトバンクをはじめ通信の新規参入企業がこぞってNTTの通信網を借りるようになる。因みにNTTの民営化は85年だった。
 2001年、ブロードバンドの普及を見込んで、ヤフーBBは全国2135のNTT局舎にルーターを配置した。既にこの時ヤフーは、IP電話のブレークを先見していた。デジタル通信から光ファイバーへ、一気に加速すると考えていたNTTは、このヤフーの攻勢に軒を貸して母屋をとられるような状況だ。また、大手電力会社も光ファイバーを独自に敷いてNTTに真っ向勝負を挑んでいる。NTTとしては、名実共にいよいよ本格的に、一企業としての正念場を迎えているとも言える。
 NTTが電電公社だった頃、通信機器を公社に供給することで発展してきた『電電ファミリー』。ここにも大きなしわ寄せは来ている。
 
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